得意分野でセンターをめざせ

さる10月30日(金)に、交野高校体育館にて、本校1期生の永松敦さんをお招きして、2015年卒業生講演会を行いました。 永松さんは、現在、宮崎公立大学で日本民俗学の教授をされています。日本の風習や食べ物のルーツを研究している気鋭の研究者です。
昨年、ほぼ40年ぶりに再会し、その後、一緒に枚方でお酒を飲んだときに、彼が語る、彼の研究している民俗学を通しての様々な話に大変興味を感じました。 そのときに永松さんの語った民俗学の話で印象に残った話がありました。日本の竹についての話です。

竹は元来、温暖な気候を好む植物で、日本は竹が生えている北限の地だそうです。実は、日本の竹はすべて自生ではなく、人が植えた植林なのだそうです。つまり、籠を作ったり、細工物に使える竹は、いろいろな家畜と同様に人の移動と共に運ばれてきた植物だというのですね。その竹の移動、DNAなどを調べてその移動の歴史を知ることで、日本人の移動の歴史の一部を解き明かせる可能性があるのだそうです。実に面白く、興味あふれるお話しでした。 そんな永松さんの民俗学が扱う研究テーマを聞き、その研究を通じて後輩に何かメッセージを伝えてくれないかと依頼したのが、今回の永松さんの講演会のきっかけでした。
永松さんは、現在宮崎にお住まいですが、母校のためならと言うことで、遠路はるばる大阪まで来てくださいました。

当日、講演会では、私からの簡単な紹介のあと、高校在学中のエピソードや研究者を志したきっかけ。学生時代に訪れたインドでの体験。そして、語学を学ぶことの大切さなどから、話は始まって、民俗学のおもしろさを、研究テーマの一つである「かぼちゃ」の歴史を通じて楽しくわかりやすく語ってくださいました。
民俗学とは何か。永松さんは民俗学がテーマとしている学問内容について、お正月の雑煮の話を例にして、話されました。雑煮のように私たちの現代の生活のなかに伝承される文化が、どうして伝承されてきたか、いかなる形で存在し、またどのように推移してきたか。言われてみれば、なぜ、お正月にお雑煮を食べるのか、その理由は、文献などに残っているわけではありません。しかし、私たち日本人は、お正月に雑煮を食べます。そういう、私たちの風習に日本人のルーツが少し垣間見えるのですね。

さらに、永松さんは「れんこん」の DNA の話などへと話が広がり、高校生の興味を引き出す、大変ためになる講演でした。
また、話の合間に、AKBなどの話題も盛り込み、時間の長さを感じさせないお話しでした。 特に最後の、「良い仕事をすること」「良い仕事とは、人が喜び、人の役に立つ仕事のことだ」というメッセージは、若い高校生たちの心に響いたようでした。 生徒たちから寄せられた感想文も、いずれもたいへん良いものでした。 また、来年もこの企画は続けたいと思っています。まずは、同窓会を代表して、永松氏にお礼申し上げたいと思います。